フェーヴ
フェーヴについて
フェーヴ(fève)とは、フランス語で「空豆」を意味しますが、毎年1月6日の公現祭に食べる「ガレット・デ・ロワ」と呼ばれる大きなケーキの中に入れておく、それこそ豆粒のように小さなおもちゃのことも指します。
1月6日に行われる公現祭は、12月25日のクリスマス(イエスの誕生)の延長線上に位置し、生まれたばかりの幼子(おさなご)イエスのところに「東方の三博士」が訪問したことを記念して行われます。⇒ キリスト教の祝日カレンダー
この日に食べる習わしとなっているガレット・デ・ロワ(la galette des rois)は、直訳すると「王たちのガレット」で、この「王たち」とは「東方の三博士」を指します。
古くからの風習として、このガレット・デ・ロワを数人で切り分ける前に、あらかじめ「フェーヴ」を 1 つ埋め込んでおき、自分が食べる分の中に「フェーヴ」が入っていた人が「王様」になる、という遊びがあり、現在でも広く行われています。
昔、ルイ十四世が宮廷の取り巻きたちと一緒にガレットを食べるときは、必ずルイ十四世がフェーヴ入りのガレットを引き当てるように仕組まれていたそうですが、現在でも、あらかじめこっそりと目印をつけておき、わざと特定の人(子供や一家のあるじなど)を「王様」にして喜ばせる、ということがよく行われているそうです。
「フェーヴ」(主に陶器製の小さなおもちゃ)は、フランスではコレクションの対象となっており、特に凝ったものでなければ 1 個 1 ユーロ前後で売買されています。多くはシリーズものになっており、人気アニメのキャラクターや、サッカー選手の人形、動物、乗り物、建築物、絵皿など、毎年、実にさまざな種類のものが作られています。
材質は、もとは陶器製で、近年になってプラスチック製や金属製(主に金メッキ)のものも作られましたが、ガレットを電子レンジで暖めるときに、中に入れておくと変形・変色するという理由から、現在では再び陶器製のものが主流となっています。
このページでは、ことわざ・ディクトンをテーマにしたフェーヴを取り上げます。
高さ 2 ~ 3 cm のごく小さなものなので、絵葉書のように多くの情報を盛り込むことができず、あまり「ひねり」を加える余地がないので、他愛のないものばかりですが...
諺のフェーヴ
星空のもとで、家の屋根の上にいる 3 匹の猫が灰色になっています。
Quand le chat n'est pas là, les souris dansent.
猫がそこにいないときは、鼠たちが踊る
と書かれています。この諺は次のようにも言います。
Quand le vin est tiré, il faut le boire.
酒を樽から出したら、飲まなければならない
この諺は、比喩的な意味でもよく使われますが、このように文字通りの意味に受け取って、酒飲みが酒を飲むことを正当化するためにも使われます。
左手に白い卵を持ち、右肩で牛をかついでいます。
なかなかユーモラスです。
Si tu veux voyager loin, ménage ta monture.
遠くへ旅したかったら、乗る馬をいたわりなさい。
と書かれています(命令形)。これは次の諺のバリエーションです。
馬をいたわるあまり、馬に乗らずに、馬をかついでいます。
といっても、子供用の木製の馬のようですが...
Tel père, tel fils.
この父にしてこの子あり
- 以上は、2005年に作られた諺シリーズのフェーヴ(10個セット)のうちのいくつかです。
ディクトンのフェーヴ
それぞれ左側が表面の写真、右側が裏面の写真です。
- 暦に関するディクトンらしく2行にわけ、一部の綴り字は通常正しいとされている書き方に直しました。
1 年 12 か月全部は揃っていませんが...
2月
Crapaud qui chante en février
a l'hiver derrière lui.
2月にひき蛙が鳴いたら、
冬は終わりだ。
- 直訳すると、「2月に鳴くひき蛙は、自分の後ろに冬をもつ」。
Quand il pleut à la Saint-Aubin,
l'eau est plus chère que le vin.
聖オーバンの日(3月1日)に雨が降ると、
水がワインよりも高くなる。
- 「Aubin」と「vin」が韻を踏んでいます。
3月1日に雨が降ると、のちのち天候不順になって少雨に苦しめられ、水の値段の方が高くなる、という意味のようです。
ここでは、水の代わりに、ワインの風呂(酒樽)に入っています。
5月
Petite pluie de mai,
rend tout le monde gai.
5月の小雨は、
皆を陽気にさせる。
- rendre は「~を~(という状態)にする」。
「mai」と「gai」が韻を踏んでいます。
6月
Pluie chaude en juin,
donne pain et vin.
6月の暖かい雨は、
パンとワインを与える。
- 「juin」と「vin」が韻を踏んでいます。
6月に暖かい雨が降ると、パンの原料である小麦とぶどうがよく育つ、という意味です。
7月
Soleil de juillet
donne fortune.
7月の太陽は
財産をもたらす。
Si l'hirondelle voit la Saint-Michel,
l'hiver ne vient qu'à la Noël.
聖ミシェルの日(9月29日)に燕がいたら、
冬はクリスマスにならないとやって来ない。
- 直訳すると、「燕が聖ミシェルの日を見たら」。つまり、「9月29日の時点でまだ燕が(南国に帰らずに)留まっていたら」。
「Michel」と「Noël」が韻を踏んでいます。
この時期にまだ渡り鳥の燕を見かけるのは、暖かい年である証拠です。
燕は基本的には渡り鳥で、ヨーロッパの場合、冬になると暖かいアフリカ大陸に渡り、また春~夏になるとヨーロッパに飛来します(他のことわざ「一羽の燕は春をつくらない」を参照)。
10月
Gelée d'octobre,
rend le paysan sobre.
10月の霜は、
農民をしらふにさせる。
- rendre は「~を~(という状態)にする」。
「octobre」と「sobre」が韻を踏んでいます。
収穫前のぶどうにとって、霜は大敵だそうです(ビドー・ド・リール (1996), p.521)。
ワインが少ししか取れなければ、農民は大切な商品を自分で飲んでしまうわけにはいきません。
ここでは、両手を広げて「いらない」という合図をしています。
12月
Froid et neige de décembre,
du blé à revendre.
12月の寒さと雪、
あり余るほどの麦。
- avoir qc à revendre は直訳すると「再び売るべき~を持っている」→「あり余るほどの~を持つ」という熟語。「du blé」の前に il y a を補って解釈します。「du」は部分冠詞。
「décembre」と「revendre」が韻を踏んでいます。
12月に寒くて雪が多いのは、農作物にとっては良いことだと考えられています(Cf. ビドー・ド・リール (1996), p.611)。
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