「北鎌フランス語講座 - ことわざ編」では、フランス語の諺の文法や単語の意味、歴史的由来などを詳しく解説します。

『プチ・ラルース』のことわざリスト

『プチ・ラルース』のことわざリスト

仏仏辞典 Le Petit Larousse illustré はフランス人にとってなじみの深い辞書で、初めて親に買ってもらった本格的な国語辞典が『プチ・ラルース』だったという人も多いようです。
前半は普通名詞編、後半は固有名詞編で、その境目には、見やすくする意味も込めて通称「ピンクのページ」が挟まっており、この部分に合計178のことわざ(※1)を集めた簡単なことわざ集が掲載されています。
有名な国語辞典に載っていることわざ集なので、学習用に参照されることも多く、良くも悪くも(※2)、無視できない影響力を持っています。

最近、この部分を見直す機会があり、ついでにこのページを作成しました。
本ホームページで取り上げたことわざについてはリンクを張り、まだ取り上げていなかったことわざについては、訳と意味、場合によっては注をつけました(※3)

  • (※1)数え方によっては 179 ともいえます。
    (※2)「良くも悪くも」というのは、必ずしも「フランス語の有名なことわざベスト178」になっているわけではなく、もとになった『十九世紀ラルース』を踏まえていることもあって、今では使われなくなっていることわざが含まれていたり、少し古い形で収録されている場合があり、そうした古いことわざや古い形は徐々にすたれたり変化していくのがおそらく自然な姿であるのに、有名な『プチ・ラルース』に載っているからという理由で生きのびているという一種の逆転現象がみられる気がするからです。
    (※3)『プチ・ラルース』のことわざリストにもごく簡潔に意味が書かれていますが、著作権の関係もあり、使用していません。配列順は Le Petit Larousse illustré 2013 に拠っています(定冠詞を省いたアルファベット順)。

178 のことわざリスト

1
A beau mentir qui vient de loin.
長旅した人のほら話

2
À bon chat, bon rat.
良い猫には良い鼠

3
Abondance de biens ne nuit pas.
ありあまる財産は害にはならない
(物や財産はいくらあっても邪魔にはならない)
※「nuit」は nuire(害になる)の直説法現在3人称単数。
実際の日常会話での使用例については、こちらの本を参照。

4
À bon vin point d'enseigne.
うまい酒には看板はいらない

5
À chaque jour suffit sa peine.
一日の苦労は一日にて足れり

6
À cœur vaillant rien d'impossible.
勇敢な心にとっては不可能なものはない

7
L'air ne fait pas la chanson.
メロディーは歌を作らない
(メロディーだけ良くてもだめだ、歌詞の中身が大事だ
→見かけは内実とは異なる)

8
À la Chandeleur, l'hiver se passe ou prend vigueur.
聖燭祭には、冬は峠を超すか厳しさを増す
(毎年この頃には冬の厳しい寒さがやわらぐか、一段と寒くなるかのどちらかだ)
※聖燭祭は2月2日で、「主の奉献」、「マリアの清めの祝日(聖母お清めの祝日)」とも呼ばれる。 ⇒ キリスト教の祝日カレンダー

9
À la Sainte-Luce, les jours croissent du saut d'une puce.
聖ルシアの日には、蚤が跳ぶ分だけ日が長くなる

10
À l'impossible nul n'est tenu.
誰も不可能なことをする義務はない
※「必要以上に無理をしなくてよい」ということなので、なまけ者にとってはありがたいことわざ(このことわざを盾に取れば、無理して頑張る必要がなくなるので)。
実際の日常会話での使用例については、こちらの本を参照。

11
À l'œuvre on connaît l'ouvrier (l'artisan).
仕事によって職人のことは知られる
(行為によって人の真価はわかる)
※下記 No.121 の On reconnaît l'arbre à ses fruits.(木は実によって知られる)と同じ意味。

12
À méchant ouvrier, point de bon outil.
下手な職人、良い道具を持たず
※逆にいえば、名手と呼ばれるような職人は良い道具を持つ。とすると、日本の「弘法は筆を選ばず」とは反対の「弘法は筆を選ぶ」のようなことわざだといえる。

13
À père avare, fils prodigue.
けちな父親に放蕩(ほうとう)息子
(息子は父親とは反対のことをしたがるものだ)
※下記 No.161 の Tel père, tel fils.(この父にしてこの子あり)の逆の意味のことわざ。
なお、fils prodigue(放蕩息子)というと、新約聖書(ルカによる福音書第15章)に出てくる「放蕩息子のたとえ話」を連想してしまうが、このことわざと直接関係はないと思われる。

14
L'appétit vient en mangeant.
食欲は食べるにつれて出てくる

15
Après la pluie, le beau temps.
雨のあとでは良い天気

16
À quelque chose malheur est bon.
何かにとっては不幸も良い
(不幸なことでも、他の角度から見ればむしろ良いと考えられる場合もある)
※実際の日常会話での使用例については、こちらの本を参照。

17
L'argent est un bon serviteur et un mauvais maître.
お金は良い召使であり、悪い主人だ
(お金は、うまくコントロールして使いこなす人にとっては「良い召使」となるが、お金を至上のものと考える人にとっては「悪い主人」となる)
※ここでいう「主人」とは「崇拝する対象」という意味で、後半は「お金を集めること自体が目的化して拝金主義におちいると、お金にこき使われる貪欲な守銭奴(金の亡者)になりさがる」という意味らしい。とすると、他の有名なことわざ Nul ne peut servir deux maîtres.(何人も二人の主人に仕えることはできない)のもとになった新約聖書『マタイによる福音書』第6章24節の「だれも、二人の主人に仕えることはできない。(...)神と富とに仕えることはできない」という言葉と関連づけて理解することができると思われる。どちらかというと「ことわざ」というよりも「名言」に近い気がする。(2014/7/10訂正加筆)

18
L'argent n'a pas d'odeur.
お金は臭わない

19
À tout seigneur, tout honneur.
それぞれの殿様に、それぞれの名誉
(どんな人にも、それぞれの地位・身分に応じた敬意を払うべきだ)

20
Au royaume des aveugles, les borgnes sont rois.
めくらの王国では、めっかちが王様だ

21
Autant en emporte le vent.
風がさらっていくも同然だ
(そんな約束は当てにならない)
※中世にさかのぼることわざ。フランソワ・ヴィヨンの詩にも、若干つづりが違うだけで、ほぼ同じ形で出てくる(鈴木信太郎訳『ヴィヨン全詩集』岩波文庫 p.77-79 では「風のまにまに翩翻(へんぽん)と」と訳されている)。20世紀になり、このことわざはアメリカ映画『風と共に去りぬ』の仏題にも採用された。

22
Autres temps, autres mœurs.
時代変われば風習変わる
※日本の「ところ変われば品変わる」は空間的な違いだが、こちらは時間的な違い。逐語訳すると、「他の時代、他の風習」。

23
Aux grands maux les grands remèdes.
大きな病気には荒療治
(大きな問題には抜本的な対策が必要だ)

24
Avec des « si », on mettrait Paris en bouteille.
いくつもの「もし」を使えば、パリでも瓶の中に入れられるだろう

25
À vieille mule, frein doré.
老いた牝(めす)らばに金の轡(くつわ)
(欠点を隠すために飾り立てること、老婆の厚化粧)
※「らば」は馬とろばを掛けあわせて生まれる動物(父親が馬、母親がろば)。市場で高く売るために、金色の轡をつけて、実物以上によく見せようとしたことから生まれた表現らしいが、現在では使われない。

26
Beaucoup de bruit pour rien.
何でもないことで大騒ぎ
※シェイクスピアの喜劇『空騒ぎ』(Much Ado About Nothing) の仏訳の題にも使われている。バリエーションとして Tant de bruit pour une omelette.(オムレツ一つでこれほどの騒ぎ)があるが、それほど一般的ではない。La montagne accouche d'une souris.(山が鼠を出産する=大山鳴動して鼠一匹)にも近い。

27
Bien faire et laisser dire.
きちんとやり、言わせておけ
(自分がやるべきことをきちんとやったら、あとは言いたいやつには言わせておけ、人の言うことは気にするな)
※下記 No.43 の Les chiens aboient, la caravane passe.(犬は吠えるがキャラバンは進む)と似た意味。

28
Bien mal acquis ne profite jamais.
不正に獲得された財産は決してためにならない

29
Bon chien chasse de race.
よい犬は血統で狩をする
(親が優れていると、子も優れている)
※「de race」(血統で)という言葉がわかりにくいが、ここでは「氏素性(うじすじょう)に基づいて」のような意味。主に親子間の遺伝について使われるので、下記 No.161 の Tel père, tel fils.(この父にしてこの子あり)にも近い。

30
Bonne renommée vaut mieux que ceinture dorée.
良い評判は金色の帯にまさる
(名声は富にまさる)

31
Bon sang ne peut (ne saurait) mentir.
良い血は嘘をつけない
(血筋は争えない、氏素性は争われぬ)
※すぐ上 (No.29) の Bon chien chasse de race.(よい犬は血統で狩りをする)に近い。文法的には「ne」は ne の単独使用。「saurait」は savoir の条件法現在3人称単数。この savoir は「できる」の意味。

32
Les bons comptes font les bons amis.
よい勘定はよい友をつくる
(友人の間でもお金の貸し借りはきちんとすべきだ)
※使い方や実際の日常会話での使用例については、こちらの本を参照。

33
La caque sent toujours le hareng.
にしん樽はいつまでもにしんくさい
(生まれ育ちが悪いと何かの拍子に現れるものだ、血筋は争えない)
※「toujours」はここでは「つねに」というよりも「ずっと、今なお、いつまでも(いつまでたっても)」に近い。下流社会出身の者は、たとえ成功して上流社会の仲間入りをしたとしても、いつまでたっても下流臭さが抜けないという意味で、主に成り上がり者を軽蔑するために使われる。似たことわざに Chassez le naturel, il revient au galop.(生まれつきのものを追い払ってみたまえ、それは駆け足で戻ってくる)がある。
caque は塩漬けのにしんを詰める樽のこと。たとえば「すし詰め状態」を意味する être serrés comme (des) harengs en caque(にしん樽の中のにしんのように密着している)という表現があるが、現在ではむしろ être serrés comme des sardines(サーディンのように詰まっている)という言い方のほうが一般的になっている(オイルサーディンの缶詰をイメージした比喩)。ここからも、現代のフランス人にとって caque(にしん樽)という言葉があまり馴染みのないものになっていることがわかる。

34
Ce que femme veut, Dieu le veut.
女が欲することは、神が欲する

35
C'est en forgeant qu'on devient forgeron.
鉄を鍛えることによってこそ、人は鍛冶屋になる

36
C'est le ton qui fait la musique (qui fait la chanson).
調子が音楽をつくる(歌をつくる)
(本心は話し方に表れる)

37
C'est l'hôpital qui se moque de la Charité.
それは慈善病院をあざ笑う施療院だ

(目くそ鼻くそを笑う)

38
Chacun pour soi et Dieu pour tous.
各人は自分のため、神は皆のため
(他人のことは神に任せよう。人は各自のことしか考えない)

39
Charbonnier est maître chez soi.
炭焼きも自分の家では主人だ

40
Charité bien ordonnée commence par soi-même.
正しい順序での慈善は自分自身から始まる
(他人のおせっかいを焼く前に、まずは自分のことを考えよ)

41
Chat échaudé craint l'eau froide.
やけどをした猫は冷たい水を恐れる

42
Le chat parti, les souris dansent.
猫が去って鼠たちが踊る

43
Les chiens aboient, la caravane passe.
犬は吠えるがキャラバンは進む

44
Chose promise, chose due.
約束したことは果たすべきこと
(約束は果たさねばならない。約束は約束だ)
※使い方や実際の日常会話での使用例については、こちらの本を参照。

45
Cœur qui soupire n'a pas ce qu'il désire.
ため息をつく心は望むものを得ていない
(ため息をつくのは満足していない証拠)

46
Comme on connaît les saints, on les honore.
人は聖人を知っているとおりに敬う
(人それぞれの性格や適性を踏まえて、人への接し方を変えるものだ)
※「聖人を知っているとおりに敬う」とは、「各聖人がつかさどる(霊験あらたかな)分野を理解した上で、それぞれの聖人にふさわしいことを祈願する」という意味。たとえば、雨をつかさどる聖メダールには雨乞い(または逆に雨のやむこと)を祈願し、迫害によって盲目となった聖ルシアには眼病の治癒を祈る、など。日本でいえば、学問の神様に縁結びを祈願するのは、おかど違いに当たるようなもの。

47
Comme on fait son lit, on se couche.
人は自分のベッドを整えた通りに寝る

48
Comparaison n'est pas raison.
比較は理由にならない
(比較だけでは何も証明したことにはならない)

49
Les conseilleurs ne sont pas les payeurs.
忠告者は支払う人ではない

50
Contentement passe richesse.
満足は富にまさる

下記 No.105 の Le mieux est l'ennemi du bien.(最良は良いものの敵)に通じる。

51
Les cordonniers sont les plus mal chaussés.
靴屋が一番悪い靴を履いている

52
Dans le doute, abstiens-toi.
疑わしいときは、やめておけ
(確信が持てなければ、行動に移さないでおけ)

53
De (Entre) deux maux, il faut choisir le moindre.
二つの悪の中では、小さいほうを選ぶ必要がある

54
Défiance (Méfiance) est mère de sûreté.
不信(用心)は安全の母

55
De la discussion jaillit la lumière.
議論から光明は射す
(議論を戦わせている中から解決策が見つかることがある)
倒置。倒置でなくすと La lumière jaillit de la discussion. となる。

56
Déshabiller Pierre pour habiller Paul
ペテロの服を脱がせてパウロに着せる
(借金を返すために他の人から借金をする、苦境を切り抜けることでまた苦境に陥る、問題を先送りして何の解決にもならない)
※直訳すると「パウロに着せるためにペテロの服を脱がせる」だが、pour を結果的に訳すと上のようになる。Déshabiller Saint Pierre pour habiller Saint Paul (聖ペテロの服を脱がせて聖パウロに着せる), Découvrir saint Pierre pour couvrir saint Paul (聖ペテロの覆いを取って聖パウロを覆う) などともいう。ペテロ (=ペトロ) はイエス・キリストの一番弟子で、もとの名はシモン。イエスに「教会を建てる礎石となるのだ」という趣旨のことを言われ (マタイ伝16章18節)、「石」(仏語 pierre ピエール) を意味する名で呼ばれるようになる。ペテロとパウロ (仏語 Paul ポール) は、ともにローマ教会の基礎を築き、皇帝ネロの迫害を受けて相次いで殉教したため、二人はセットで扱われることが多く、祝日も毎年6月29日に一緒に祝われる。この「ことわざ的表現」の起源としては、ある教会(この表現ではペテロを祀る教会)の装飾・備品・財産などを取り去って、他の教会(パウロを祀る教会)に備えつけるようなことが行われたことに由来するという説が有力 (キタール, p.296 ; ブルーワー, p.1487 ; etc.)。ただし、「着せる」という言葉は「聖人の彫像には当時衣服を着せる習わしがあったことと関わりがある」(キタール, p.297) ので、この表現の「ペテロ」と「パウロ」も「聖ペテロの像」「聖パウロの像」のことだと受け取り、聖ペテロの像を着飾っていた衣服や飾りを剝ぎ取って聖パウロの像に「着せる」ことをイメージしても間違いではないと思われる。英語では to rob Peter to pay Paul という。

57
Deux avis valent mieux qu'un.
一つの意見よりも二つの意見のほうがいい

58
Dis-moi qui tu hantes, je te dirai qui tu es.
誰と交友しているのか言ってみたまえ、君が誰だか言いあててみせよう

59
Donner un œuf pour avoir un bœuf
卵を与えて牛を得る
(海老で鯛を釣る)
Qui vole un œuf vole un bœuf.(卵を盗む者は牛を盗む)(No.154) と同様、発音の似た œuf(卵)と bœuf(牛)を使って、価値の小さいものと大きいものを表している。

60
L'eau va à la rivière.
水は川へ行く
(お金は金持ちのところに集まる)
Les petits ruisseaux font les grandes rivières.(小さな流れが大きな川をつくる)(No.128) と同様、お金の比喩として水が使われているところが興味深い。

61
En avril, n'ôte pas un fil ; en mai, fais ce qu'il te plaît.
4月には糸一本脱ぐな、5月には好きなようにしろ

62
L'enfer est pavé de bonnes intentions.
地獄は善意で敷き詰められている

63
Entre l'arbre et l'écorce il ne faut pas mettre le doigt.
木と樹皮の間に指を入れてはならない
(内輪もめ(夫婦喧嘩など)に口を出してはならない)

64
Erreur n'est pas compte.
間違いは勘定ではない
(計算の間違いはいつでも正すことができる、過ちては改むるに憚ることなかれ)

65
L'exception confirme la règle.
例外は規則を確固たるものにする

66
La faim chasse le loup hors du bois.
空腹は狼を森から外に出させる

67
Fais ce que dois, advienne que pourra.
あとでどうなろうとも、なすべきことをなせ
(どのような結果になるかは気にせず、すべきことをせよ)
※文法説明は難しい。前半は古語法による主語の省略 (Cf. 朝倉, p.427 右) で tu が省略されているが、tu を補って Fais ce que tu dois ということもある。Fais ce que tu dois faire(君がすべきことをしろ)と同じ意味。後半の advienne は advenir(起こる)の接続法現在。その次の que は古語法で ce qui と同じ。後半だけを取り出すと Qu'advienne ce qui pourra advenir !(起こるべきことが起こるように!)という独立節による祈願文と同じだといえるが、ここは「譲歩」の意味で前半にかかっていると取りたい(「何が起ころうとも」)。いずれにせよ、決まりきった表現として暗記しておく必要がある。

68
Faute de grives, on mange des merles.
つぐみがいなければ黒歌鳥(くろうたどり)を食べる

69
La fête passée, adieu le saint.
祭(まつり)が過ぎたら、さようなら聖人様
(得たいものが得られて満足したら、誰のお蔭で得られたのかは忘れてしまうものだ)
※ fête には「祝日」(聖人の祝日)という意味もある。フランスでは 1 年 365 日、どの日がどの聖人の日であるかが決まっており、ある聖人の祝日当日は、その聖人をさんざんあがめたてまつって(それを口実に)お祭騒ぎをしたのに、翌日以降はすっかり顧みなくなってしまうことを指している。文法的には「絶対分詞構文」として説明可能。ことわざの使用頻度は低い。日本の「喉元過ぎれば熱さを忘れる」に通じる部分がある。

70
La fin justifie les moyens.
目的は手段を正当化する

71
La fortune vient en dormant.
財産は眠っている時にやって来る

72
Des goûts et des couleurs, il ne faut pas discuter.
趣味と色については議論してはならない
(各人それぞれ好みがある、蓼喰う虫も好き好き)
※ discuter de ~「~について議論する」の de ~ が文頭に出た形。goût には「味覚」や「味の好み」という意味もあり、この意味も比喩として込められている。なぜ couleurs(色)なのかは分かりにくいが、couleur はここでは「色」ではなく「意見」という意味である可能性も指摘されている。日本語だと、十人十色、「色々」な色があって当然で、なんとなく納得してしまうのだが... 似たことわざに Autant de têtes, autant d'avis.(頭の数だけ意見がある)がある。

73
Les grandes douleurs sont muettes.
大きな痛みは無言だ

74
Les grands diseurs ne sont pas les grands faiseurs.
大きな口をたたく者は、大きなことをなす者ではない

75
Les grands esprits se rencontrent.
偉大な精神の持ち主は出会うものだ
※たまたま二人が同じ考えを持っていることがわかったときに冗談で使ったりする。似たことわざに、Il n'y a que les montagnes qui ne se rencontrent pas.(出会わないのは山だけだ)がある。

76
L'habit ne fait pas le moine.
服装が修道士を作るわけではない

77
L'habitude est une seconde nature.
習慣は第二の天性

78
Heureux au jeu, malheureux en amour.
賭けで幸福だと、恋愛では不幸だ
(ギャンブルで大当たりをし、恋愛でも幸福だという人は、なかなかいない)

79
Il faut battre le fer pendant qu'il est chaud.
鉄は熱いうちに打て

80
Il faut que jeunesse se passe.
若者は大目に見られるべきだ
(若者が軽率に犯した過失は、若気の至りとして許されるべきだ)

81
Il faut qu'une porte soit ouverte ou fermée.
扉は開いているか閉まっているかでなければならない

82
Il faut rendre à César ce qui appartient à César, et à Dieu ce qui est à Dieu.
カエサルのものはカエサルに、神のものは神に返す必要がある

83
Il faut tourner sept fois sa langue dans sa bouche avant de parler.
話す前に口の中で七回舌を回す必要がある

84
Il ne faut jamais jeter le manche après la cognée.
斧(おの)のあとで決して柄(え)を投げてはならない
(あきらめてさじを投げてはならない)
※「cognée」(斧)は、ここでは斧の鉄の部分を指す。木を伐っていた樵(きこり)が、斧の鉄の部分が外れて深い水底に沈んだのを見て、やけくそになって斧の柄までも投げ捨てたという逸話に由来するらしい。

85
Il ne faut jurer de rien.
何ごとも誓ってはならない
※次の No. 86 と同じ意味。

86
Il ne faut pas dire : Fontaine, je ne boirai pas de ton eau.
言ってはならない、「泉よ、おまえの水は飲まないぞ」とは

87
Il n'est pire aveugle que celui qui ne veut pas voir (Il n'est pire sourd que celui qui ne veut pas entendre).
見ようとしない人ほど、たちの悪いめくらはいない(聞こうとしない人ほど、たちの悪いつんぼはいない)
※ voir も entendre も、実質的には comprendre(理解する)の意味。「勝手つんぼ」という日本語を連想してしまう。

88
Il n'est pire eau que l'eau qui dort.
眠っている水ほど悪い水はない

89
Il n'y a pas de fumée sans feu.
火のないところに煙は立たぬ

90
Il n'y a pas de sot métier.
愚かな職業などない
(職業に貴賤なし)
※この後ろに il n'y a que de sottes gens.(愚かな人がいるだけだ)とつけ加えることも多い。

91
Il n'y a que la vérité qui blesse.
傷つけるのは本当のことだけだ

92
Il n'y a que le premier pas qui coûte.
大変なのは最初の一歩だけだ

93
Il vaut mieux aller au boulanger (au moulin) qu'au médecin.
医者に行くよりもパン屋(水車小屋)に行くほうがいい

94
Il vaut mieux avoir affaire (s'adresser) à Dieu qu'à ses saints.
聖人よりも神様にかけ合った(話をした)ほうがよい
(下っ端の者ではなく、責任者に直接話をつけたほうがよい)

95
Il vaut mieux tenir que courir.
追いかけるよりも持っていたほうがいい

96
Il y a loin de la coupe aux lèvres.
盃(さかずき)から唇までは遠い

97
L'intention vaut le fait.
意図は事実に匹敵する
(どんな意図で行われたのかは、行為自体と同じくらい重要だ)
※法諺(法律分野のことわざ)。

98
Le jeu ne vaut pas la chandelle.
賭けをしても蠟燭代にもならない

99
Les jours se suivent et ne se ressemblent pas.
日々は続くが、互いに似ることはいない

100
Loin des yeux, loin du cœur.
目から遠くに、心から遠くに

101
Les loups ne se mangent pas entre eux.
狼は共喰いしない

102
Mains froides, cœur chaud.
冷たい手、暖かい心

103
Mauvaise herbe croît toujours.
雑草はたえず生長する

104
Mettre la charrue avant (devant) les bœufs.
牛の前に犂(すき)を置く
(物事の順序をあべこべにする)
※ Il ne faut pas mettre la charrue avant les bœufs.(牛の前に犂を置いてはならない=物事の順序をあべこべにしてはならない)という使い方をすることが多い。
実際の日常会話での使用例については、こちらの本を参照。

105
Le mieux est l'ennemi du bien.
最良は良いものの敵

106
Mieux vaut tard que jamais.
遅くなってもやらないよりはましだ

107
Morte la bête, mort le venin.
獣が死ねば毒も死ぬ
(敵や悪人も死ねば害がなくなる)

108
Les murs ont des oreilles.
壁に耳あり

109
Nécessité fait loi.
必要が法を作る
(極端な状況では、法に背いた行為も許される。背に腹は代えられない)
※場合が場合なら、法は踏みにじってもよい、という意味。例外的な状況において、例外的な措置を正当化する言葉。

110
Ne fais pas à autrui ce que tu ne voudrais pas qu'on te fît.
人にされたくないことを他人にするな

111
N'éveillez pas le chat qui dort.
眠っている猫を起こすな

112
Noël au balcon, Pâques au tison.
クリスマスはバルコニーで、復活祭は暖炉で

113
La nuit porte conseil.
夜は助言をもたらす

114
La nuit, tous les chats sont gris.
夜にはすべての猫が灰色だ

115
Nul n'est prophète en son pays.
預言者郷里に容れられず

116
L'occasion fait le larron.
機会が盗人を作る

117
Œil pour œil, dent pour dent.
目には目を、歯には歯を

118
L'oisiveté est mère (la mère) de tous les vices.
無為は悪徳の母

119
On ne fait pas d'omelette sans casser des œufs.
卵を割らずにオムレツを作ることはできない

120
On ne prête qu'aux riches.
人は金持ちにしか貸さない
※「人は返してくれそうな人にしかお金を貸さない」(貧しい人はお金を貸してもらえない)という文字通りの意味とは別に、比喩的に「誰がやったかわからない行為は、有名な人がやったと考えたがるものだ」(無名の人はかえりみられない)という意味で使われることもある。これは、prêter A à Bには「AをBに貸す」のほかに「AをBに帰する、AをBのものだとみなす」( = attribuer A à B) という意味もあることによると思われる(ことわざでは A に相当する語句は省略されている)。

121
On reconnaît l'arbre à ses fruits.
木は実によって知られる
(人の価値は行為によって知られる)
※『マタイによる福音書』第12章33節などには、イエス・キリストも説教の中でこのことわざを使っている場面が出てくる。

122
Paris (Rome) ne s'est pas fait(e) en un jour.
パリ(ローマ)は一日にしてならず

123
Pas de nouvelles, bonnes nouvelles.
便りのないのはよい便り

124
Pauvreté n'est pas vice.
貧困は悪ではない

125
Péché avoué est à demi pardonné.
告白された過ちは半分許されている

126
Petit à petit, l'oiseau fait son nid.
少しずつ鳥は巣を作る
(こつこつやれば、やり遂げられる)
※「塵も積もれば山となる」に近い。上記 No.122 の Paris (Rome) ne s'est pas fait(e) en un jour.(パリ(ローマ)は一日にしてならず)に通じる。下記 No.128 の Les petits ruisseaux font les grandes rivières.(小さな流れが大きな川をつくる)にも似ているが、特に金銭の倹約に関して使われるわけではない。

127
Petite pluie abat grand vent.
少しの雨が大きな風を鎮める

128
Les petits ruisseaux font les grandes rivières.
小さな流れが大きな川をつくる

129
Pierre qui roule n'amasse pas mousse.
転石 苔を生ぜず

130
Plaie d'argent n'est pas mortelle.
お金の傷で死ぬことはない

131
La pluie du matin réjouit le pèlerin.
朝の雨は巡礼者を喜ばせる
(朝に雨が降ると天気がよくなることが多い)
Rouge au soir, blanc au matin, c'est la journée du pèlerin.(夕方に赤く、朝に白ければ、巡礼者日和だ)に似たことわざ。

132
La plus belle fille du monde ne peut donner que ce qu'elle a.
世界で一番美しい娘も、持っているものしか与えられない
(誰でも自分の能力の限界以上のことはできない)
※上記 No.10 の À l'impossible nul n'est tenu.(誰も不可能なことをする義務はない)に近い。

133
Plus on est de fous, plus on rit.
(ばか騒ぎする)人は多ければ多いほど楽しい
※ fous には「数が多い」と「ばか騒ぎをする、はしゃぐ」の両方の意味ないしニュアンスが込められている。定員をオーバーしかけている楽しい集まりに、参加するかどうか迷っている人を誘う場合などに使われる。

134
Prudence est mère de sûreté.
慎重は安全の母

135
Quand le vin est tiré, il faut le boire.
酒を樽から出したら、飲まなければならない

136
Qui a bu boira.
飲んだ者は飲むだろう
(悪い習慣は決してなおらない)
※飲酒癖は治らない、身についた悪い習慣は治らない。わずか 5 音節の文の中に boire(飲む)の過去形(複合過去)と未来形(単純未来)が隣りあわせに並ぶことによる見事な構成美を備えており、わずかな言葉で多くを物語ることわざの一つの究極の姿を示しているといえるかもしれない。

137
Qui aime bien châtie bien.
よく愛する者はよく罰する

138
Quiconque se sert de l'épée périra par l'épée.
剣を取る者は皆、剣で滅びる
(武力に訴える者は、武力で身を滅ぼす)
※イエス・キリストが裏切者のユダに裏切られて捕らえられるときに、捕らえにきた者に剣を抜いて斬りかかった者に対して、戒めるために述べた言葉(『マタイによる福音書』第26章52節など)の仏訳に由来する。

139
Qui donne aux pauvres prête à Dieu.
貧者に与える者は神に貸す

140
Qui dort dîne.
眠る者は食事をしている

141
Qui ne dit mot consent.
黙っている者は同意している

142
Qui ne risque rien n’a rien.
何も危険を冒さない者は何も得ない
(虎穴に入らずんば虎児を得ず)
※「rien」の反復と、3回出てくる ri の音が効果的。単に語調がよいというだけでなく、たたみかけるような調子によって、尻込みしている人のためらう余地をなくし、迷いを断ち切る効果を生んでいる気がする。

143
Qui paie ses dettes s'enrichit.
借金を返す者は金持ちになる
※このことわざを聞いて、納得がいかないと感じる人も多い。たしかに借金を返すと心理的にはほっとするが、金持ちになったという実感は得られないからである。借金を返せば利息を払う必要がなくなるからだ、と説明されることもあるが、どうも釈然としない。「変なことわざベスト5」に入るかもしれない。

144
Qui peut le plus peut le moins.
最大のことができる人は最小のこともできる

145
Qui sème le vent récolte la tempête.
風を蒔く者は嵐を収穫する

146
Qui se ressemble s'assemble.
似た者は集まる

147
Qui se sent morveux se mouche.
洟(はな)が出ていると気づいたら洟をかめ
(人に指摘されて自分の間違いに気づいたら間違いを正せ)
※ Qui se sent morveux, qu'il se mouche. ということもある。ここから分かるように、この mouche は文法的には(直説法と形は同じだが)接続法で、qu'il se mouche. は独立節による三人称に対する命令。qu'il がなくても同様の意味に取るのが適当。

148
Qui s'y frotte s'y pique.
手出しをする者は刺される

149
Qui trop embrasse mal étreint.
抱きかかえすぎる者は、うまく抱きしめない

150
Qui va à la chasse perd sa place.
狩に行く者は席を失う

151
Qui veut la fin veut les moyens.
目的を望む者は手段を望む

152
Qui veut noyer son chien l'accuse de la rage.
飼い犬を溺れさせたい人は、その犬が狂犬病だと言って非難する

153
Qui veut voyager loin ménage sa monture.
遠くへ旅をしたい者は、自分の馬をいたわる

154
Qui vole un œuf vole un bœuf.
卵を盗む者は牛を盗む

155
Rira bien qui rira le dernier.
最後に笑う者がよく笑う

156
Santé passe richesse.
健康は富にまさる
※使用頻度は高くはない。英語の Health is better than wealth. に対応。passer は他動詞で「~にまさる」。

157
Si jeunesse savait, si vieillesse pouvait.
もし若者が知っていたらなあ、もし老人ができたらなあ

158
Le soleil luit pour tout le monde.
太陽は万人のために輝く
※理論上、万人の権利とされている「平等」をうたったことわざ。動詞 luire(輝く)の代わりに同じ意味の briller を使って Le soleil brille pour tout le monde. ともいう。ただし、理論に反して現実には日の当たらない人々もいるわけなので、Le soleil brille pour tout le monde, mais bien des gens sont à l'ombre.(太陽は万人のために輝くが、多くの人が日陰にいる)ということもある。

159
Tant va la cruche à l'eau qu'à la fin elle se casse (qu'enfin elle se brise).
壺を何度も水汲みに持って行くと、ついには割れる

160
Tel est pris qui croyait prendre.
つかまえると思っていた者がつかまえられる

161
Tel père, tel fils.
この父にしてこの子あり

162
Le temps, c'est de l'argent.
時は金なり

163
Tous les chemins mènent à Rome.
すべての道はローマに通ず

164
Tous les goûts sont dans la nature.
自然の中にはあらゆる趣味がある
(蓼喰う虫も好き好き)
※上記 No.72 の Des goûts et des couleurs, il ne faut pas discuter.(趣味と色については議論してはならない)と同じ意味。

165
Toute peine mérite salaire.
どんな労力も報酬に値する
(どんな小さな仕事についても報酬が支払われるべきだ)

166
Toute vérité n'est pas bonne à dire.
すべての真実が言うのが良いわけではない
(真実であっても、言わないで黙っておいたほうがいい場合もある)
tout(すべての)を ne... pas と組み合わせると部分否定になる。

167
Tout nouveau tout beau.
すべて新しいものはすべてよい
(新しいものはつねに魅力的だ。何でも新しいものは良く見えるものだ)
※少し皮肉をこめて「よく見えるのは最初のうちだけだ(慣れてしまえば何てことはなくなるものだ)」という意味で使われることも多い。
なお、日本には「女房と畳は新らしいほうがよい」ということわざがある。

168
Tout vient à point à qui sait attendre.
待つことができる人には、すべてはちょうどよい時にやって来る

169
Trop de précaution nuit.
用心しすぎは害となる
(慎重になりすぎるのはよくない)
※あまり使われない。

170
Un clou chasse l'autre.
ある釘が他の釘を追い出す
(新しい人が古い人にとって代わる)
※新旧交代してポストが引き継がれる場合などに使われる。日本の「後釜(あとがま)にすわる」という表現に通じる気がする。

171
Un de perdu, dix de retrouvés.
一人失うと十人見つかる
※失恋した人を慰めるときに使われる。文法的には、2回出てくる「de」は連結語と呼ばれるもので、『ロワイヤル仏和中辞典』の de の C. 文法的機能, 3「形容詞・過去分詞・数詞などとともに」に該当する(Cf. 朝倉 p.162 左)。

172
Une fois n'est pas coutume.
一回は習慣ではない

173
Une hirondelle ne fait pas le printemps.
一羽の燕は春をつくらない

174
Un homme averti en vaut deux.
忠告を得た人は二人に値する

175
Un mauvais arrangement vaut mieux qu'un bon (que le meilleur) procès.
良い(最良の)訴訟よりも悪い示談のほうがいい
(裁判に持っていくよりは、たとえ妥協をして損をした気になったとしても、示談で解決したほうがいい)

176
Un tiens vaut mieux que deux tu l'auras.
二つの「いまに手に入るよ」よりも一つの「はいどうぞ」のほうがいい

177
Ventre affamé n'a point d'oreilles.
空腹は耳を持たない

178
Vouloir c'est pouvoir.
望むことは、できることだ












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