「北鎌フランス語講座 - ことわざ編」では、フランス語の諺の文法や単語の意味、歴史的由来などを詳しく解説します。

QuequesProverbes

1932年の「いくつかのことわざ」の絵

このページでは、1932年に Le Pèlerin(ル・ペルラン)という週刊誌に掲載された QUELQUES PROVERBES(いくつかのことわざ)という題の 1枚のイラストを取り上げます。

  • Le Pèlerin(ル・ペルラン)は「巡礼者」の意。1873年創刊のキリスト教系の週刊誌で、若干名称を変えながら現在まで続いており、近年の発行部数は20万部前後。このイラストは 1932年5月15日発行の第2877号の裏表紙に掲載されたものです(筆者所蔵)。

主に動物をテーマとして 6 つのことわざが描かれています。

何ということもありませんが、なんとなくユーモラスです。

QUELQUES PROVERBES

順に、一つずつ拡大していきます。



1)上の部分

Ne fais pas aux autres...

Ne fais pas à autrui ce que tu ne voudrais pas qu'on te fît.
己の欲せざるところ人に施すことなかれ

  • Ne fais pas aux autres ce que tu ne voudrais pas qu'on te fît.と書かれていますが、意味は同じ。

新約聖書の中のイエス・キリストの言葉に由来することわざですが、ここでは「動物に殺されたくなかったら、動物を殺すな」と解釈されています。

今から見ると、人種差別の匂いが感じられる気もしますが、そもそも当時はまだ人種差別という概念や、それが悪だという考え方は浸透していなかったようです。



2)右上の部分

En toutes choses..

En toutes choses, il faut considérer la fin.
何ごとにつけても結末を考慮する必要がある

「ある行動をとる前に、それがどのような結果になるのか、よく考えてから行動しろ」という意味のことわざです。

このまま枝を切り続けたらどうなるか、よく考える必要があります。

このことわざは、まだ他のページでは取り上げていなかったので少し補足しておきます。
これはラ・フォンテーヌ『寓話』第3巻第5話「狐(きつね)と山羊(やぎ)Le Renard et le Bouc に出てくることわざです。ざっと次のような話です。

  • のどが渇いた狐と山羊は、井戸に下りていって水を飲んだ。狐が「先にぼくが井戸から上がるから、踏み台になってくれ。ぼくがはい上がったら、あとから君を引っぱりあげるから」と言うと、山羊はその通りにした。しかし、狐は山羊を引き上げることなく、そのまま立ち去ってしまった。

この話の最後に「教訓」としてこのことわざが出てきます。

ラ・フォンテーヌはイソップ物語の「井戸の中の狐と山羊」をほとんどそのまま流用しており、イソップでも似たような教訓で終わっています(Cf. 岩波文庫『イソップ寓話集』中務哲郎訳 p.30)

なお、これ以降(3~6)のことわざも、すべて直接的にはラ・フォンテーヌ『寓話』に由来します。



3)左中の部分

On a souvent besoin...

On a souvent besoin d'un plus petit que soi.
人はしばしば自分より小さい者を必要とする

足元に置いてある箱に VERS(虫)と書かれています。

釣り人は、釣りざおに虫を取りつけながら、虫がいなかったら魚を釣ることすらできない、ということに改めて気づかされているようです。

つまらない虫けらのようなものの力を借りることもあるのだ、というわけです。

あとで出てくる 5) は弱肉強食のことわざですが、それとは反対に、必ずしも弱肉強食の論理だけで世界が成り立っているわけではない、ということを述べたことわざだといえます。



4)右中の部分

Tel est pris qui...

Tel est pris qui croyait prendre.
つかまえると思っていた者がつかまえられる

獲物をつかまえるために仕掛けておいた罠に、猟師自身が引っかかっています。

驚いて銃を放ってしまったようです。

右下では、うさぎが鼻に親指を当てて(さらに小指に他方の手もつなげて)ひらひらさせています(馬鹿にする仕草)。



5)左下の部分

La raison du plus fort...

La raison du plus fort est toujours la meilleure.
最も強い者の理屈がつねに最もよい理屈

ターバンを巻いているところを見るとインド人でしょうか。

「いつでも一番力の強い者の理屈がまかり通る」という、弱肉強食のような意味のことわざです。



6)右下の部分

Rien ne sert de courir...

Rien ne sert de courir, il faut partir à point.
走っても無駄だ、ちょうどよい時に出発する必要がある

以上までは(枝を切っている絵を除き)動物をテーマとした絵で統一されていますが、この絵だけは異なります。

実は、このことわざを絵に描く場合は、いつの頃からか、走って乗り物に乗り遅れる場面を描くのがお決まりとなっています(⇒ この諺を描いた絵葉書を参照)。

それで、ここだけは動物とは関係のない絵にせざるをえなかったのでしょう。

煙をたなびかせているのは、蒸気機関車です。
















aujourd'hui : 1 visiteur(s)  hier : 0 visiteur(s)









本サイトは、北鎌フランス語講座 - 文法編の姉妹サイトです。あわせてご活用ください。



powered by Quick Homepage Maker 5.2
based on PukiWiki 1.4.7 License is GPL. QHM

最新の更新 RSS  Valid XHTML 1.0 Transitional